一冊の街

立川市役所に恒久設置

スクロールできます

記憶を遡ると、それはスチール製品そのものにも強く宿っている。廃品となるまでにさまざまな人の手に渡り、例えば傷や歪みという姿でモノに刻み込まれるのだ。愛用されたものも、酷使されたものも、モノは素直に、無言に、痕跡を残している。こういった道具の記憶を掘り下げていく作業は、その過程で数多くの「人の気配」と出会う仕事でもあった。
そして、「動」から「静」へ。
紙の様にぺらぺらにされ、集められた記憶たちは一冊の本に集約される。文字も数字もないこの本は、無言でありながら、数多くの市民の気配を語る。この街の営みを照らし出す史書、あるいは未来を書き綴るスケッチブックだろうか。いずれにせよ、この彫刻に関わる全てが街と深く結びつくものであり、冷え固まった鉄は不変の記録となる。「一冊の街」と題した。


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