3mm厚のチェア。
JID AWARDを受賞しました。

椅子って家具の中でもちょっと特殊な存在だと思うんです。定位置に据え置かれたテーブルや棚とは違い、日常的に頻繁に動かされて、空間にズレを生じさせる。それが不意に人の気配を感じさせたり。人が安全に座れるための剛性が必要、でも頻繁に動かすなら軽いほうがいい。そんなこんなで作り甲斐も難易度も高い椅子作り。数多のデザイナーや職人、家具作家たちが挑み、歴史を作ってきた分野なのです。
ウチからも一脚。
2022年のJID AWARDにて、プロダクト部門賞を受賞したアームチェアです。
メイキングをご覧頂ければ幸いです。


材料カット

フレームに使う材料はできるだけ薄く。でも薄すぎるとエッジを丸めても手触りがよろしくない。ちょうどいいのが3mm厚のアングル材と3.2mmの鉄板でした。レーザーカットで切り出したフォルムは、「強度が要る箇所や身体が触れる箇所は巾を広く、それ以外は細く」という考えから。


曲面パーツは鍛金で

背もたれやアームは、身体と直接触れ合う部分。そして造形的にこの椅子の顔となる重要なところです。丁寧にコツコツと、鍛金で成形していきます。


鉄をほぞ組み

ほぞ組みとは、材料同士にそれぞれ凸と凹を作って組み合わせる技法です。もともと木工で用いられる技法ですが、これを鉄でやってみました。強度と組み立て効率がUPし、視覚的なアクセントにもなっています。細かい仕込みになるので、電動工具を使わずに手ヤスリで微調整。


組み立て

角パイプで作った治具(赤いやつ)に材料をクランプで固定すると、一気に椅子のフォルムに。製作時、いちばんテンションが上がる瞬間です。そのテンションを原動力に、これまた一気に全溶接。

ビード(溶接痕)は、外側はアクセントとしてそのまま残し、内側は削って滑らかに。たこ焼き界で語られている「外はカリッと、中はトロッと」と、ニュアンスは一緒です。


仕上げ

全体に錆止め塗装を施した後に、仕上げの特殊塗装。フレームのカラーは2種類ありますが、黒いほうは真っ黒ではございません。色味の異なる複数の塗料を、海綿でムラやボカシ作りながら何層も塗り重ねています。で、いい感じの鉄色になったところで、ウレタン塗料(艶消しクリアー)のトップコート。強固な塗膜にして、フレームは完成です。


ラインナップは4種類

2種類の形 × 2種類のカラー。お求めの方はこちらをご覧下さいませ。また、ショールームで実際に座ってみたい方はcontactからご連絡をお願いいたします。

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室内空間での鉄の役割。他の素材と比べて強度があり、その分薄く細く作れるのが鉄の長所のひとつです。なので空間をキリッと引き締めたい時、鉄素材がうまくハマります。シャープネスをとことん追求しつつ、人体と馴染む曲面を微調整していく。いろんな体格の人に座ってもらいながら実験を重ね、自信作が出来上がりました。