野鍛治の門冠

ハイアットセントリック金沢/石川県金沢市

鉄を叩く鍛冶屋の中で、「野鍛治」と呼ばれる人々がいる。彼らの生業は、農具や漁具、包丁などの制作。日常生活に寄り添ったモノ作りである。石川県は古くから野鍛治が盛んな場所であり、ここで産まれた鉄の道具たちが金沢の食文化を支えてきた。

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本作品は実際に現地を巡って集めた鉄の古道具を材料としている。
硬質なイメージの鉄製品を熱して叩くことで、有機的なフォルムに変えていく。うねうねとした金槌の痕跡は鉄たちの脈拍。これらを繋ぎ合わせ、樹木のフォルムに再構築する。一連のプロセスは「人工物を自然物に戻す」行為とも言える。
砂鉄を溶かし、叩いて道具を作ってきた野鍛治たちとは真逆のプロセスの「叩く」。これを経て金箔で彩られた姿は、絢爛でありながらどこか懐かしさや素朴さを持ち合わせるだろう。対照的なイメージは、共に金沢の産業を示すものとして融合し、門冠の松(※)として旅人を迎える存在となる。

※門冠の松:門に添えて植えられる松で、縁起が良いとされている。

art direction by BOND DESIGN STUDIO


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