まじわりの象形

東京ベイ潮見プリンスホテル/東京都江東区

水、舟、宿、倉、食…潮見に訪れた旅行者たちが、そこで出会う風景や体験。これらを示す漢字を集め、そのルーツを辿る。
漢字もそれ自体、旅人に見立てることができる。旅の始まりは甲骨文字。およそ3300 年前、亀の甲羅や動物の骨に刻印され、漢字の起源と言われる象形文字である。それらが時を経て形を変え、日本へ旅立ち読みを変え、現代に至る。
この甲骨文字を本作品のモチーフとする。史書に記された輪郭をそのまま再現するわけではない。鉄製品を熱して叩いて再構築し、甲骨文字を「表現」する。
これにより、もうひとつの象形が産まれることになる。一般的に鉄製品はほとんどがリサイクル品。スクラップを溶かして再精錬され、全く別の製品に生まれ変わる。しかし「溶かさず叩く」という製法では、以前の姿が少し残る。実物の道具から作られた鉄文字には、そこかしこに「かつて道具であった」名残が見え、その成り立ちやビジュアルは、あたかも象形文字のようだ。
古代文字としての象形と、現代の道具から産まれる象形。
関連性の無い両者がひとつの作品となった姿は、旅先で異なる文化が交わる様子とダブるかもしれない。交わりの場とも言える宿のレセプションにおいて、この暗号のような古代文字がコミュニケーションのきっかけとなる事を願う。


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